磯部ろうそく店 / 暮らしをつくるしごと from 岡崎
Exhibition 暮らしをつくるしごと from 岡崎|江戸時代から300年、原料も作り方も変えずに、和ろうそくを製造する「磯部ろうそく店」にお話を伺いました。
Exhibition 暮らしをつくるしごと from 岡崎|江戸時代から300年、原料も作り方も変えずに、和ろうそくを製造する「磯部ろうそく店」にお話を伺いました。
INTERVIEW
2024.04.16 UP
江戸時代から300年、原料も作り方も変えずに、和ろうそくを製造。和ろうそくとは、ハゼの実という植物を中心に自然の原料だけを使って、日本古来から作られてきたろうそくのこと。お店の入り口からは職人が手作業で制作している様子も見ることができ、伝統工芸が身近に感じられる。そんなお店はふらっと立ち寄れる雰囲気があり、現代の暮らしに合う使い方も丁寧に教えてくれる。
住所:愛知県岡崎市八幡町1-27
営業時間:10:00〜18:00
定休日:水曜・日曜定休
九代目店主・磯部亮次さん(60)
出身も育ちも岡崎。 大学卒業後、IT企業に勤務し、先代の病をきっかけに、磯部ろうそく店へ入店。岡崎市議会議員も務める。
和ろうそくの製造販売。お店では、お香、線香、お塔婆、卒塔婆も取り扱っています。
<和ろうそくづくりの手順>
●竹串の準備
できあがったろうそくを抜きやすいように、竹串に油をつける。
●芯さし
和ろうそくの芯となる、イグサの繊維を和紙に巻いたものを、竹串に刺していく。
●芯づけ
下がけ用のロウを熱して溶かす。
芯にロウをつけ、ろうそくの基本の形を作っていく。
●もみつけ
ロウのつき具合を確かめながら、ろうそく同士がくっつかないようにする。バランスよく自立させて、乾かす。
●下がけ
てのひらでロウをかけていく(ロウの温度45〜50℃)。
乾かしてはまたかけるという作業を繰り返し、ろうそくの太さ、形を揃えていく。
●上がけすり(この行程をすることで、ろうそくがツヤのある質感になる。)
上がけ用のロウを熱して溶かす。
すり鉢の中にロウを漉しながら注ぎ、すり鉢の中に固まっていたロウをすり棒でかき混ぜ、溶かしたロウを足しながら30分ほど練りなめらかにする。
ロウの温度が下がり、固まってくると、白っぽい色に変化。
そこに再度上がけ用のロウを注ぎ、次の行程へ。
●上がけ塗り
手作りの台を使って串を数本ずつ転がしながら、手で上がけを塗っていく。
●芯出し
ろうそくの部分を串から外し、先端を機械でロウを溶かしながら削って芯を出す。
大きいろうそくは、串にさしたまま芯を出す。
●尻切り
温めた包丁でろうそくを切り、長さを揃える。
(割れやすいので回転させて周りから少しずつ溶かしながら切る)
完成。3日かけて製作。
小さなものは2000本、大きなものは100本程を一度に作ります。
詳しく知りたい方は、Youtubeをご覧ください。
二足のわらじを履いているため、その日の仕事によって生活スタイルが変わります。和ろうそくは注文状況に合わせて製作するため、2か月前から仕事の予定を調整をしています。
<ろうそく店の仕事のみの一日>
7:00 起床・食事や日常
9:00 仕事始め・合間に昼食
19:00 仕事終わり・食事をし、ゆっくりして本を読むなど
12:00ごろ 就寝
※議員の仕事がある日は、日中に議員の仕事をし、夜に和ろうそくを製作。その日の行程を進める。
ろうそく屋としては、工房内の椅子に座り、下がけの作業をしている時間が長いです。
竹串です。この竹串に、芯を差して、ロウをつけていきます。
これは明治時代に作られたもの。
一度、火事で全て燃えてしまいましたが、今では串を作る職人がいないため、廃業したろうそく屋さんから譲り受けて今日まで使っています。
全国に20軒ほどしかない和ろうそく屋のうち、3軒が岡崎にあります。
なぜかというと、岡崎はお寺の数が多いことに加えて、朝夕にお仏壇に手を合わせる人が多く、仏教が根付いている場所だから。
あとは鎌倉からの浄土真宗が定着していて、漆や金箔が使われた煌びやかなお仏壇が多いこと。禅宗と言われる曹洞宗や臨済宗で主流の、黒檀仏壇という真っ黒なお仏壇に比べると、漆や金箔を使っているお仏壇は汚れが気になりやすい。和ろうそくの特徴はすすが少なく、お仏壇を汚しにくいのが一つの売りなので、浄土真宗が多い地域に和ろうそく屋も残っています。伝統工芸というのは、そもそも地域に根ざした仕事なんですよ。
一日の終わりにね、灯りでも見て、それから寝つくと寝つきがいいですよ。ろうそくの灯りの揺れを見ると、心が落ち着きますよね。
火を見てると、どんどん吸い込まれるんじゃないかと思うくらい意識が集中していく。そういう時間って普段はないですからね。僕は昔から、ろうそくの灯りだけで酒を飲もうよという話をします。ちょっと不自由を楽しむのもいいんじゃないでしょうか。