一隆堂 / 暮らしをつくるしごと from 岡崎
Exhibition 暮らしをつくるしごと from 岡崎|1955年創業。手焼きせんべいのお店「一隆堂」にお話を伺いました。
Exhibition 暮らしをつくるしごと from 岡崎|1955年創業。手焼きせんべいのお店「一隆堂」にお話を伺いました。
INTERVIEW
2024.04.16 UP
1955年創業の手焼きせんべいのお店。 国産小麦粉や八丁味噌など、素材の風味を活かして一枚一枚じっくり丁寧に焼き上げるせんべいは、口溶けの良さと素朴な味わいが昔から変わらず人気。 お茶のお供にも手みやげにもぴったり。定番のやはぎせんべい・カステーラせんべい・栗せんべいの他に、季節限定のせんべいも。
住所:岡崎市連尺通3-18-2
営業時間:10:00〜17:00
定休日:水曜日、最終木曜日+不定休
井口昌久さん(68)
大学卒業後、22歳で家業を継いで2代目を務める。
親族が煎餅屋の家系で、先代の父が現在の場所にお店を開き、現在69年目。 最終水・木曜の連休に温泉旅行に行くのが何よりの楽しみ。
せんべいの原料を用意して計量し、混ぜ合わせて焼き、個包装のち袋詰めをして販売しています。
粉と水を混ぜるときは口溶けを良くするため、グルテンが出ないように機械を使わず手で混ぜています。膨張剤を使わないので味も良くなりますが、冬は乾燥しているので、この作り方だと割れやすくなるのが難しいところ。口溶けを考えて、型の彫られた方にタネ(生地)を薄く流して焼いていますが、薄いほど火が通りやすくて焦げてしまうので気をつけています。焼けたら型からはがして押台で押し、一時保存のために缶に入れます。
オープン前の時間や、定休日、パートさんが来る日に焼き作業をして、焼かない日は店頭に立ちながら、裏の事務所でパック詰め作業をしています。
<焼き作業をしている日>
6:30 煎餅焼き始め
11:00 休憩
12:00 再度煎餅を焼く
15:00 煎餅焼き終わり
17:00 片付け終わり、仕込み
家に帰ったら、ごはんを食べてTVを見て、ゆっくりお風呂に入って寝る
焼き場の前です。
18個の型を高温にした後、1枚あたり5分程かけて弱い火でじっくり焼くので、とても時間がかかります。さらに、一度冷めると温まるのに40分程かかってしまうため、機械をセッティングしたらなるべく手を止めず、焼きながら型の温度が上がりすぎたら機械から下ろし、低くなったらカラ焼きをして温度調整をしています。昔は顔で温度を測っていたんですよ。
せんべいの焼型です。
今の型は40年前のもので18台ありますが、もう今の型を同じように彫れる人もいないし、テフロン加工の型では同じ味にならないので、大切に使っています。 祖父が始めた、なたね油を型につける作業の「つやつけ」をやっているのは、今では愛知県では私一人になりました。油を落としてから型を熱し、400℃まで温度を上げ、刷毛で油を何層にもなるよう練りこみながら塗っています。いまだにうまくつかない時があるくらい技術が必要で、この作業に3〜4時間かかっています。
創業当時から「やはぎせんべい」の柄は変わらず、矢作橋と桜をモチーフにしているところです。
また、10年前の改装時には、国産材料に切り替えるためにレシピの変更もしました。基本の味は変えないようにしながら、地元の八丁味噌と自家製の味噌をブレンドして使うようになりました。
これからも自分用に、手土産にとうちの商品を選んでくれたら嬉しいです。
店の改装後は、バリエーションを増やそうと季節ごとにチョコレートなどを練り込んだせんべいも始めました。また、美味しいとずっと買いに来てくれている人、何年経っても味が忘れられないとまた買いに寄ってくれる人もいます。そんなお客様を裏切らないように、味や口溶けを変えてはいけないと、手間はかかるけれど仕込みも手焼きも引き続き頑張ります。