つながりが広がるコトづくり

カフェと制服という、一見関係がなさそうに見える二つに共通する思い。真鶴出版のお二人に取材していただきました。

COLUMN

2022.06.09 UP

昨年立て続けに発表された、アングルの1階にオープンした「Park Side Cafe」と、アングルオリジナルのスタッフコート「ユニ・フォーム」。カフェと制服という、一見関係がなさそうに見える二つだが、そこにはどちらにも共通する思いがあった。二つの企画を生み出した飯田さんを取材した。

    インタビュー・編集:川口瞬、山中みゆき(真鶴出版)


地域内外の日常が滲み合うカフェ】 

2021年12月12日、アングルの1階に「Park Side Cafe」がオープンした。そこには、コーヒーやラテをはじめとするドリンクに加え、ピスタチオのシュークリームや季節のフルーツなどを使用したパウンドケーキやマフィンなど焼き菓子のメニューがある。

「旅人だけでなく地域の人もアングルにふらっと来てくれたら、という思いがずっと心の中にあったんです。これまでもイベントは不定期に開催していたんですが、イベントばかりだと非日常的な場所になってしまうなと感じていて。そこに日常的なコーヒーや焼き菓子があったら、地域の人も来てくれるんじゃないかと。地域内外の人たちが自然と交わって、日常と滲み合う空間にしたいと思ってカフェをオープンしました」と飯田さん。

そんなカフェで責任者を任されているのが安保明さん。以前はアングルのバーによく来てくれていたお客さんで、飯田さんと話していくうちに働くことが決まったという。なんと、前職はインテリアショップの販売員。お菓子づくりは好きだったものの、つくったものを販売するという経験があったわけではなかった。

そこで飯田さんは、安保さんに研修へ行ってもらう。研修先は逗子にある「POOL SIDE COFFEE」だ。ここは飯田さんの大学の同級生が経営しているカフェで、実際のメニューづくりにも協力してもらった。ちなみに、カフェで提供しているカフェラテやドリップコーヒーで使用する豆も、その同級生の師匠が経営する蔵前の「LEAVES COFFEE ROASTERS」から仕入れている。「カフェをつくる」ということをきっかけに、つながりがどんどん広がっていった。

左:カフェ担当の安保明さん 右:オーナーの飯田圭さん 

「食はいろいろな人との関係性でできるものだと思うんです。修行先や仕入れ先も、人のつながりを辿っていって。その中でさらに県外の人にもアングルを知ってもらえたらいいなと思ったんです。今後は地域のフルーツを使ったメニューもつくっていきたいですね」

生地や染めにもこだわる、スタッフコートづくり 】

実は昨年完成したスタッフコート「ユニ・フォーム」をつくったときも、カフェと同じようにつながりが広がっていた。もともとは「誰がスタッフか分かりやすいようにユニフォームをつくろう」と始まったこのプロジェクト。最初はお客さんであり、パタンナーのZINOさんに相談をした。ユニ・フォームづくりはZINOさんを起点に広がっていく(詳細はこちら)。

例えば、生地は岡崎の隣・蒲郡にある「森菊株式会社」。染めの原料として製造工程で出てしまう飲めない茶葉を提供してくれたのは、岡崎で200年以上続くお茶屋である「宮ザキ園」。そして染めの工程は、名古屋学芸大学の学生たちに協力してもらった。

この生地で学生が制作したものの展覧会をアングルで開催した。
コンセプトは白衣。ボタンは近所にある「小沢屋」で選んだものを使っている。
宮ザキ園で廃棄になるはずだったお茶を使って、先生や学生たちと一緒に染めた。

飯田さんはスタッフコートづくりをこう振り返る。

「想像以上にアングルらしいものになりました。例えばデザインは、アングルの建物がもともとカメラ屋さんだったことから、白衣をオマージュしています。色も抹茶染めをしたら、アングルらしい自然なグレーになりました。そして生地も茶葉も、廃棄してしまうはずのものをもう一回使うというところは、僕らの根底にある大切なものと一致するなと」

仲間を増やし、暮らしを楽しむ

カフェやスタッフコートづくりに共通するものは、何かコトを始めるのをきっかけに、つながりを広げていくこと。いろいろな人を巻き込むと、その分大変なこともあるが、自分一人ではできない思いもよらぬものができる。「“人に頼りながらつくる”というスタンスでやっていきたい」と飯田さんは言う。そこには、飯田さんが移住当初に感じた思いがあった。

「移住してきた当初、寂しかったんですね(笑)。岡崎で暮らしながら、一緒に楽しめる仲間が増えたらいいなということがベースにあります。その中で仕事になっていって、地域も、ぼく自身も楽しくなったらいいなって」

この思いは今後やりたいことにもつながっていく。

「今後は岡崎のことを知ってもらえるような媒体をつくっていきたいんです。SNSでも発信をしているけれど、より手触り感のあるZINEのようなものを地域の編集者やデザイナーとつくれたらなと。そのほかにも、徒歩15分圏内の不動産屋もやりたいなと思っています。貸し手と借り手、それぞれの思いをつなげられるような」

仕事を通して仲間を増やし、仲間を増やして仕事を増やす。飯田さんのコトづくりの姿勢が、岡崎をもっと面白くしていく。

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川口瞬

真鶴出版代表。雑誌『日常』編集長。

1987年山口県生まれ。
大学卒業後、IT企業に勤めながらインディペンデントマガジン『WYP』を発行。“働く”をテーマにインド、日本、デンマークの若者の人生観を取材した。

2015年より神奈川県真鶴町に移住。
「泊まれる出版社」をコンセプトに真鶴出版を立ち上げ出版を担当。
地域の情報を発信する出版物を手がける。

「LOCAL  REPUBLIC  AWARD  2019」最優秀賞。

つながりが広がるコトづくり

カフェと制服という、一見関係がなさそうに見える二つに共通する思い。

真鶴出版のお二人に取材していただきました。