僕のアングルから、みんなのアングルへ〈前編〉 – 6年目のアングルがいま考えていること –
開業6年目を迎え、大きな転換期に立つアングル。オーナーの飯田とマネージャーのすずかがいま描いている未来について、取材していただきました。
開業6年目を迎え、大きな転換期に立つアングル。オーナーの飯田とマネージャーのすずかがいま描いている未来について、取材していただきました。
INTERVIEW
2025.12.26 UP
開業から6年目を迎えたアングル。2026年1月には、岡崎市内の里山エリアに一棟貸し宿「脈 MYAKU」がオープンする。そんな節目の年、長年スタッフとして現場を支えてきたたいらすずかさんが、アングルのホテルマネージャーに就任。
その背景や、いまアングルが描く未来を、代表の飯田圭さんと、たいらすずかさんに聞いた。
取材・執筆・撮影/前田智恵美(フリーライター)

ーー 今年で開業から6年目。いまアングルはどんなフェーズにいると感じますか?
飯田:正直、いまもスタートダッシュの途中だと思っています。5年間で積み上がったものはあるけど、同時にまだ不安定さもある。そして、過渡期でもありますね。
ーー 過渡期とは?
飯田:“僕のアングル”から、“みんなのアングル”へ、どう移行していくかということです。いままで、経営に関する仕事は僕が担う部分が大きかった。でも、これからは「どうしたら宿を続けていけるか」を、チームのみんなで考えていきたいんです。このチームづくりは、僕自身がもっと学ばなければいけないと感じています。
ーー 具体的な変化はありますか?
飯田:立ち上げの時期から、メンバーと相談しながらアングルを運営してきましたが、売上や経営の話まで深く議論する機会は多くありませんでした。でも、これからはその部分にも踏み込んで話し合い、意識的にチームで進めていきたいと思っています。
そのうえで僕は経営と企画に集中して、少しずつ“現場を任せる”方向へシフトしていきます。もともと僕は外交的な活動が多いので、いままでも任せてはいたんですけど、やはり“現場で宿をしっかり支える人”が必要だと感じていて。その流れで、すずかちゃんにアングルのホテルマネージャーをお願いしました。

ーー そう考えるようになった背景は?
飯田:実は最近、「アングル編集室」という部門を立ち上げて、地域の企業さんと一緒に新しいプロジェクトを生み出す仕事を本格的にスタートしました。でも、アングルの実務や新しい宿の開業準備を同時に抱えると、どうしても対応できる仕事量に限りがあって。いま、これらのバランスをどう取るか模索しているんです。
ーー 「アングル編集室」では、どんなプロジェクトを進めているんですか?
飯田:たとえば、蒲郡の繊維商社「森菊」さんの新規事業として三河木綿の新しいブランドを立ち上げたり、岡崎の老舗和太鼓店「三浦太鼓店」さんと「桶太鼓」という太鼓のリブランディングを一緒に進めたりしています。地域に根付いている産業に、僕たちならではの編集的な視点を掛け合わせて、事業の伴走や企画、実行、制作までを一貫して行っています。
ーー そういった仕事は、これからも増やしていく予定ですか?
飯田:ご縁があればぜひそうしたいですね。企業の方々と一緒に長く続くモノやコトをつくっていくことは、“まちの編集室”であるアングルの考え方ともつながっています。地元産業をきっかけにこの地域に魅力を感じてくれる人が増えれば、その流れでアングルにも人が訪れてくれる。そんないい循環が生み出せたらうれしいです。
ーー すずかさんは、マネージャーの打診をどう受け止めましたか?
すずか:いえ、実は私のほうから「マネージャーになりたい」と圭さんに伝えたんです。2024年9月、スタッフ構成が変わって、新しいメンバーが加わった時期でした。

それまでは、言葉にしなくてもなんとなくスタッフ同士のあいだで「アングルとは何か」という哲学のようなものが共有されていました。でも、新しいスタッフを迎えるときに、それをきちんと言葉にして伝える必要がありました。ここがずれてしまうと、アングルとしての軸もぶれてしまう気がして。
そのとき、「アングルの価値観を正しく伝えていくためには、この場所に根を張る人が必要だ」と感じたんです。
ーー なるほど。
すずか:それと、いままでは「今日、圭さんいますか?」って、圭さんがきっかけでアングルに来てくださるお客さまが多かったんです。でも、チームでアングルを運営するなら、私たちスタッフに会いに来てくれる人も増やさないといけない。そのために、スタッフがもっと前に出ていく必要がある。その第一人者として、まず私が前に立つことに決めました。
ーー そして2025年7月、マネージャー就任。どんな活動をしていますか?
すずか:まず8月に、「じぶんでつくる、旅ノート – 村上製本ワークショップ」というイベントを初めて自分で企画運営しました。
それから、スタッフの夕凪さんと一緒にスナックユニット「夕涼み」を結成して、イベント出店を始めました。宿なので、旅行に来た方をお迎えするのは当然なんですけど、地元の方との接点も増やしたくて。
12月からは、私たちの日常を紹介する「暮らし感光案内所」というインスタグラムをスタートしました。

ーー さっそく精力的に活動しているんですね。
飯田:でも、スタートダッシュで力尽きてきた姿をこれまで見てきたからな……。短距離走タイプだよね。
すずか:そうなんです。あれこれ手を出して続かないタイプ(笑)。マネージャーとして始めたことを、息切れせずに継続できるか、そしてスタッフのみんなとどう連携して習慣化できるか。そこがいまの私の課題だと思っています。
ーー ほかに、すずかさんが課題だと感じていることはありますか?
すずか:もう一つ課題に感じているのは、「自分で決める」ということです。
私は、誰かが求めていることを先回りして動くことが得意で、圭さんの判断を前提に働くことにも慣れてきました。でも、マネージャーになったからには、自分で意思決定していく必要があります。その負荷から逃げてしまうと、「これは圭さんが判断したことだから」と、どんどん他責思考になってしまう気がして。だからこそ、自分で考え抜いて、「これがアングルにとって正解だ」と決められるようになりたいと思っています。
そんなすずかさんはなぜ「アングルに根を張る」ことを選んだのか。
続く後編では、すずかさんの生い立ちから現在に至るまでの物語を紹介する。

僕のアングルから、みんなのアングルへ〈前編〉 - 6年目のアングルがいま考えていること -
開業6年目を迎え、大きな転換期に立つアングル。オーナーの飯田とマネージャーのすずかがいま描いている未来について、取材していただきました。