街を見渡すアングルができるまで

「ここで何かしたい」という人が増えたら、街はもっとおもしろくなる。岡崎の魅力を感じるために、魅力に触れる玄関口となるようなマイクロホテル『アングル』をつくりました。

COLUMN

2020.06.30 UP

※この記事はクラウドファインディングの際に書いた文章をANGLEのメディアに合わせて編集を加えたものです。

オープンから1ヶ月が経った今、マイクロホテルアングルができるまでの流れを、自分がこの場所で実現したかったことと合わせて整理できればと思います。今回は、僕と岡崎の出会いについてを。

はじめまして。ANGLEのオーナーを務める飯田圭(いいだけい)と申します。僕は愛知県岡崎市で『Camping Office osoto(オソト)』というコワーキングスペースの運営や、イベントを企画しています。これからのたくさんのプロジェクトが、あなたにとって岡崎という街へ訪れたいというきっかけになれば嬉しいです。

こうして岡崎のことを語っていますが、実は僕自身は山梨県の生まれ。岡崎市へは2016年にやってきました。

東京の大学でまちづくりや地域文化について学び、ローカルのおもしろさに目覚めて山梨の銀行に入行。「地元のいろんな企業の情報を知る銀行なら、おもしろい企業同士の橋渡しをしておもしろいことができる」。そう思っていました。


ただ、現実は思うようにいきませんでした。

自分がやりたいと思うことと、組織から求められていることのギャップにもやもやする日々。そんな状況下で僕が地域に関わるようになったきっかけは、山梨県甲府市の市街地にある空き家や店舗を使ったアートプロジェクトに参加したことでした。「ワインツーリズム」というワイナリーを巡るツアーをお手伝いしたり、同世代の仲間と地域のお祭りを立ち上げたりする中で、さまざまことを経験。地域ではいろんな人が、自らの意志をもっていろんな働き方や仕事をしている。そして、自分たちで自分の暮らしをつくっている。

いつしか自分もそんな場に身を置きたいと思い、銀行を辞めてあらたな世界へ飛び込むことを決意しました。そして縁あって移住を決めたのが、愛知県岡崎市です。

売上をあげることに特化した「Oka-Biz」という中小企業支援機関で約1年勤め、地域のユニークな中小企業とたくさん接するなかで「自分でも事業をやりたい」と思い、独立。

公私融合して働く仲間が欲しい。そんな人が集まれる場が欲しい。そこをきっかけに仕事を生み出す人が増えたらいいな。と考えていました。

そんな時に、スノーピークビジネスソリューションズの村瀬さんと出会い、現在管理をするコワーキングスペースの立ち上げと運営・企画をパートナーとして委託していただけることに。そして、地域の人や企業をつなぐ、コワーキングスペースの運営や企画などを生業として、今に至ります。

コワーキングスペース「Camping Office osoto」

僕自身、岡崎市は縁もゆかりもない土地でした。この地域へ来るまでは八丁味噌とオカザえもんくらいしか知りませんでした。


でも、岡崎にきて3年半。コワーキングスペースを運営したり、イベントを企画したり、訪ねて来てくれる友人を案内したりすることをきっかけに、街のことを少しずつ知るように。また、何よりも住む街のことをもっと知りたくて、自分の足でいろいろ見聞する度に、数多くの魅力に気づいていきました。

たとえば、愛知県で第一号の食品衛生許可を取った創業約90年の洋食屋「菊や」は、いつ行っても爽やかな接客をしてくれます。300年の伝統を持ち、体験を含めて丁寧に説明してくれる和蝋燭店「磯部ろうそく店」。創業なんと大正8年、今でも薪でお湯を沸かす銭湯「龍城温泉」。戦後の闇市から続く2と7のつく日に実施する朝市「二七市」。地域から愛されるソウルフード的な街中華「九州」。

また、川や里などが街のすぐ近くにあるのも魅力。乙川という岡崎の山と街をつなぐ川は街のコミュニティのような場所になっていて、マルシェや期間限定のバーなど、気候が良い季節はいつも何かしらのイベントで賑わっています。僕も結婚パーティーを河川敷で街の人の力を借りて実施しました。

市街地から30分車を走らせると額田地区という山間地域があり、豊かな自然が広がります。そこでも200年続くお茶屋さん「宮崎茶園」。心が洗われるような素敵な空間で夕方が似合う喫茶店「夕方喫茶」など、魅力が豊富です。

コワーキングスペースもある康生地区と呼ばれる地域には、強い想いをもつこだわりの個人店舗や事業をしている人たちも増えていて、岡崎へ旅をする理由のひとつになるほどの大きな魅力になっています。

…あげだせばきりがありませんが、ここに根付くモノやコト、考え方にはいつも素敵で学ばされます。「街」と一文字で表しても、それは企業や人の集まり。おもしろい人たちがたくさんいるからこそ、おもしろい街になるんだと日々感じています。県外市外から友人・知人が訪れる度に案内するのですが、みんなそれぞれの視点はありつつも、この街を魅力的に感じてくれています。


しかし、一方で課題も感じるようになりました。それは、その魅力やおもしろさを伝える玄関口となる「宿」があまりないということ。

ビジネスホテルはあるのですが、街の魅力を主体的に発信して地域とのつながりを生むような、岡崎に訪れるきっかけを生み出せるような宿はあまりないと感じています。物件のご縁と自分でこの事業がしたいという思い。宿をきっかけに素敵な人が地域に増えてほしいという願い。それがこのプロジェクトを立ち上げた最大の理由です。

岡崎にマイクロホテル『アングル』をつくることは、あくまでもひとつの手段だと考えています。いちばんの目的は、岡崎の生活に触れて「ここで何かしたい」と思ってくれる人を増やすこと。ホテルって、その街でのくらしを擬似体験できる場所だと思います。ここで暮らしたい。ここで働きたい。ここで子育てをしたい。何をするかは、その人次第。

でも、「ここで何かをしたい」という人が増えたら、街はもっとおもしろくなる。そうなれば、そこに暮らす人たちも楽しくなるはずです。

そのきっかけに『アングル』がなれたら、そんなに幸せなことはありません。まだ漠然とですが、そんなふうに思っています。

街を見渡すアングルができるまで

「ここで何かしたい」という人が増えたら、街はもっとおもしろくなる。岡崎の魅力を感じるために、魅力に触れる玄関口となるようなマイクロホテル『アングル』をつくりました。